中根公夫 愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔

早川書房「悲劇喜劇」連載中「プロデューサーの大遺言」

蜷川幸雄

清水邦夫 ロンドンの晴舞台

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(24)ー(悲劇喜劇2021年9月) 清水邦夫は私になつかない人だった。 抑々のお付き合いは、1982年に日生劇場で上演した、「雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた」という、例によって長い…

嵐徳三郎 手間のかかった「徳さん」

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(16)ー(悲劇喜劇2020年5月号) 大阪の歌舞伎役者嵐徳三郎と知り合ったのは、徳三郎が蜷川幸雄宛に出した一種の毛筆の手紙からだった。 『近松心中物語』 帝劇公演中のことで、蜷川は私にその…

高橋惠子 関根恵子

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(15)ー(悲劇喜劇2020年3月号) 昔、関根恵子という名でデビューしたのが現在の高橋惠子さんである。結婚して高橋になった。しかしその名が変わったのには、単に結婚というだけ以上の意味があ…

松重豊 幻のオセロー

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(11)ー(悲劇喜劇2019年5月号) この間の暮れも押しつまった時期、松重主演の番組を、2、3本たて続けに観た。 『孤独のグルメ』という評判のテレビ番組の特集だった。松重も売れて食える様に…

巨匠吉井澄雄の失敗

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(8)ー(悲劇喜劇2019年1月号) 吉井さんは舞台照明の世界にかくれもない、うつ然たる大家・巨匠であって、その独り群を抜いてそびえ立っている。 私は蜷川幸雄と仕事を初めた最初の『ロミオと…

辻村寿三郎 ジュサリンという変人

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(8)ー(悲劇喜劇2018年11月号) 辻村寿三郎さんは天才的な人形作家であると同時に、すぐれた舞台衣裳デザイナーであり製作者である。そのデザイン感覚は単なる衣裳デザインの枠を越えて小道具…

朝倉摂さん : 摂ちゃん 摂バア バアルフレンド  

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(5)ー(悲劇喜劇2018年5月号) 朝倉さんは著しく評価の上下する人だ。従ってその名も動詞変化の様に変化する。 「摂ちゃん」は摂ちゃんの評判がそんなに悪くない時だ。そんな時は持前の人柄が…

アラン・リックマン 大きな優しいセント・バーナード犬

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(4)ー(悲劇喜劇2018年3月号) アラン・リックマンといえば、いつも大きなセント・バーナード犬を連想する。そう、あのハリー・ポッターに出てくるスネイプ先生だ。映画の印象とは違って、私…

怒りん坊な秋元松代先生

ー愛しき面倒な演劇人 名プロデューサーが明かす知られざる素顔(1)ー(悲劇喜劇2017年9月号) 題名に「先生」と付けたのは、没後16年を経た今でも全面的な畏敬の念と共に三分の恐怖が残るからだ。先生は怒りん坊だった。はっきり云えば単に怒りん坊という…

愛すべき面倒な人

ー追悼・平幹二朗ー(悲劇喜劇2017年3月号) 平幹二朗が名優であり、名優といえば平幹二朗と相場が決まったのは、そんなに昔のことではない。やはりそれは蜷川幸雄との出会いがあり、『三文オペラ』や『ハムレット』などを経て、『王女メディア』『近松心中…

いわゆる「世界のニナガワ」

ー追悼・蜷川幸雄ー(悲劇喜劇2016年9月号) 蜷川幸雄演出の芝居を海外で上演しようと考え始めたのは、1980年の『NINAGAWA・マクベス』の公演の頃だったと記憶する。蜷川を最初に大劇場の演劇に私が誘って、蜷川がそれに応じ結果自分の劇団を解散して、運命…